朋子は女子大の入試にも合格したけれども、貧しい家のことを考え、東北の都市で住み込みとしてバス会社に入った。バスの営業所には、米子という芸者上りの女や、運転手の浮田などがいたが、朋子の出現ですっかり明るさを増した。彼女の仕事始めは、車庫の掃除から、車の油さしで、女だてらに車の下へもぐりこみ、嬉しそうに鼻唄まじりで油をさしていると、めずらしく社長の信吾が訪れた。これが又無類の好人物で、朋子とは直ちに大の仲良しになってしまう。信吾の甥三郎は性来の浮気者である。信吾を囲んで開かれた宴会の晩、朋子は三郎の経営している映画館へ連れて行かれ、そこで彼の乱行を見せつけられたが、朋子は逆に三郎を温く見る気持になった。運転手の浮田の御陰で、朋子は運転免許を得た。その吉報を持って三郎の所へ行った時彼女は急性盲腸炎で倒れ、病院へかつぎこまれた。その退院も間近かなある日、信吾...